【リアルがそこにある】真鍋昌平さんの漫画「アガペー」を読んだよ
「アガペー」を読んだ。
闇金ウシジマくんは身近では起きてないけど、いつか起こるかもしれない、きっとどこかで起きているリアルが書いてある。明日はわが身だと思いながら読んでいた。
作者の方が自ら徹底的に取材して描いた作品だからだと思う。
「アガペー」もきっとどこかでいまも起きている作品集。
帯にも「ローカルでいま起きている『現実』をすくいとる」って書いてある。
アイドルオタクの話『アガペー』
地方都市に住む若者の話『ショッピングモール』
震災後の移住者の話『おなじ風景』
女性写真家の話『東京の女』
の4作品が収録されている。
アガペーの意味を調べてみたら『神の愛。罪人である人間に対し、神が注ぐ自己を犠牲にした愛。』
アイドルオタクの話だからなるほど!ってなった。
その中でも私は「東京の女」という最後に収録してる作品を読んでもらいたい。
私が上京したばかりっていうのもあるけど、アラサー独身女には刺さる。
女性カメラマンの結衣は夢をもってカメラマンになったはずだった。
本当はなりたいカメラマン像はあったけれど、風俗の宣材写真ばかり撮っている。
それだけじゃ食べれないからスナックでアルバイトもしている。
やりたいことはいっぱいあるけどお金はない。
自分をちやほやしてくれてなんとなく落ち着く西荻窪にいつも行ってしまう。
そこの飲み屋の常連となんとなく抱かれてしまう。
ラブホテルの天井のシミを見て思う。こわい。
「私は何にこんな怯えて生きているんだろう」
そんな28歳結衣の話。
最後に1作品ずつ作者の真鍋さんが解説している場所がある。
そこに書いてある文も刺さる。
あんなに輝いていた青春の日々。いたい場所でいたい人達とやりたいことをする。たったこれだけのことが困難。向かうべき目的地もぼやけて、日々の暮らしにいっぱいいっぱいで満員電車に押し流される。東京はお金と地位と名誉があれば風景だった数億円のマンションや高級ホテルも我がもの顔でいられる。生きる。ただそれだけのことに怯えている。飲み屋で馬鹿笑いしてる人が、一人部屋で精神安定剤を飲んでいる。よく聞く話。雨の日の夜の東京は、街明かりが倍増してうっとりするほど美しい。
すごく素敵な文章だと思った。
お金を持つ者か持たない者かで大きく人生が変わる。
大人になってそれを肌で感じることが多くなる。
ウシジマくんも言っていた私の好きな言葉。
「金がすべてではないがすべてに金がいる」
東京という街はそれが顕著に現れると思う。
東京は地方民からすればキラキラした街だけど、住んでみるとキラキラした部分の裏にあるものはすごく大きくてそのキラキラに飲み込まれそうになる。
私も半年しか住んでないけれど、考える時間も与えられないほど生きることに精一杯だった。
このコロナでの自宅待機の期間がなければもう少し押しつぶされていたかもしれない。
きっとみんな何かを抱えているけれどそれを見せないように生きてる。
それをうまくできないと東京では生きていけないのかもしれない。
そんなことを考えた作品だった。
真鍋さんの漫画にはリアルが詰まっている。